内向き志向の問題は、内にさえ目を向けていないこと

オピニオン

昨年参加した、日本の離島の地域おこしを行うインターンシップ「島キャン」。
そこでの活動内容、気づきや学びを縁あって、「日経カレッジカフェ|大学生のためのキャリア支援メディア」に記事を寄稿させていただきました。

その連載の中でも特別な思い入れがある「海外志向の私が離島に目を向けたワケ」「家のような温かい「まちづくり」をしたくて」という2つの記事。

記事の引用も交えながら、問題視されている「内向き志向」についてわたしなりの考えを書きたいと思います。

根っからの海外志向が始まり

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日本では見たこともなかったカラフルで綺麗な色使いの建物や、壮大な自然。フレンドリーな人々との英語を使ったコミュニケーション。

高校2年生のドイツ短期留学をきっかけに、海外の魅力にすっかりハマってしまいました。

大学の専攻は、英米文学。カナダとイギリスへ短期留学に行き、それに加えて、旅行でアメリカ、台湾、オーストラリアにも行きました。

海外に行っても行っても、行き足りない状態。

その熱は、海外文化が好きな余り、リアルな文化を読めるウェブマガジン「CULTUREAL(カルチュリアル)」を立ち上げてしまうほどです。

 

学生最後の夏休みは、日本の離島へ

長期休みの度に、海外に出かけていたわたしですが、学生最後の大学4年生の夏休みは、異色とも思える選択をしました。

それは、都会の大学生が離島で2週間働きながら、島おこしを手伝うインターンシップ「島キャン」に参加するというもの。

実際に、鹿児島県にある奄美群島のひとつ、与論島に行き、商工観光課で島おこしを身を以て体験しました。

 

なぜ海外志向のわたしが、日本の離島に目を向けたのか

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△島キャンメンバーと、お世話になった民宿のおじいちゃんとおばあちゃん。

1番の理由は、海外の人と多く関わる中で、自分の出身国のことを話せないのは、恥ずかしいと強く感じたから。

海外に行くと、相手にとっての自分の情報は、年齢や職業よりも、まず「日本人」であること。
スーパーでの買い物中など、どんなにささいな会話でも、出身国を尋ねられることがとても多いです。

人口は?働き方は?おいしい食べ物は?宗教観は?政治は?

いろんな質問をされる中で、英語力うんぬんの前に、そもそも日本のことを知らないことに気がつきました。

 

この経験は、所属していた英語部での、外国人観光客の方へのボランティアガイドでもひしひしと感じていました。
わたしより、観光客である外国人の知識の方が勝っているということも、少なくなかったのです。

よく聞かれる質問の中でも特に困ったものが「日本の田舎は、どう?」というもの。

千葉県出身で、中高大と関東を離れたことがないので、この質問に彼らと同じ観光客としての立場以上の答えを返すことが出来ません。

そこで、日本の地域に実際に行き、文化を生身で体験して、その魅力を伝えたいと思ったのです。

 

「内向き志向」と言うけれど、内を見ているとは思えない

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△真っ青な島の海。

若者の内向き志向が問題視されていますが、実のところ内さえも見ることができていない学生が多いと思います。
海外に行けば、否応なしに「自分は日本人である」と感じます。そして、日本人なのに日本についてほとんど話すことができないことに気がつくでしょう。

若者の内向き思考については、ここ数年ずっと指摘され続けていますが、「内向き志向」という言葉は、あまりしっくりくるものではありません。

なぜなら、外を見ていない人に、内の魅力は見えてこないから。

海外の文化を存分に吸収して、帰国後に日本文化を改めて学んで、体験する。そこで初めて外向きと内向きの二つの思考を手にすることができます。 

大事なことは、一方向から文化を理解するのではなく、複数の視点から文化を見ること。それが、本当の意味での文化理解に繋がると信じています。

海外に目を向けると、今まで見えていなかった日本の魅力が見えるようになり、田舎に目を向ければ、都会の魅力が明らかになります。

一面だけを見ていいと思っていても、比べてみたら、そうでもなかったということは何事にも当てはまるもの。

ここで「隠居系男子」というブログを運営されている鳥井弘文さんの言葉を。

20代前半で世界に出て、色々なものを見てきた自分が思ったのは、もう手垢のつきまくりな言葉なのであまりこういう表現で書きたくはないのですが、自分は日本のことを全く知らないということ。

今の自分が持っている「ものさし」で測れるのはここまでなんだという現実に直面し、それがあまりにも短すぎるという挫折感を味わいました。

自国の文化を深堀りした分だけ、他国の文化を理解できるようになる。 | 隠居系男子

ここで鳥井さんがおっしゃっている「ものさし」とは、他国の文化と出会った際に、その文化を理解するために必要となる、自身の中にある比較対象物のこと。

これは「自国の文化の深堀りをした分だけ、他国の文化を理解できるようになるもの」という考え方に基づいています。

もう一度日本の文化を学ぼうと思い、日本を深く知ることができるウェブメディアを立ち上ようと決意し「MATCHA」や「灯台もと暮らし」を始めたんです。

自国の文化を深堀りした分だけ、他国の文化を理解できるようになる。 | 隠居系男子

ウェブマガジンを立ち上げようと思った時に、情報のセンスに驚いた「MATCHA」や、地域おこしの勉強を始めた時に出会い、今では大ファンの「灯台もと暮らし」。

とっても素敵な2つのメディアの背景が、同じ思いから出発していたことを知り、日本文化を掘り下げる前段階として、まず海外に一度しっかりと目を向けることが、とても大切だと改めて感じました。

馴染みのない文化に飛び込むことが、身近な文化を知ることに繋がり、身近な文化を掘り下げることが、馴染みのない文化を知ることに繋がるのです。

Ai Tabata

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「AI TIME」編集長。まちづくりベンチャー企業で広報・旅行事業立ち上げ→オーストラリア・メルボルンで海外フリーランス。企画/PR/Webマーケティングを...

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